介護付き有料老人ホームの人員配置基準は、厚労省が決めています。
それによると、利用者3人に対してお世話をする職員(看護職員と介護職員の合計)を、1人以上配置しなければならない。これが 3対1 基準です。
この基準では要介護者は1人と数えますが、要支援者は0.3人と数えます。
また、利用者の数は、前年度(毎年4月1日に始まり翌年3月31 日をもって終わる年度)の平均値(全利用者等の延数を当該前年度の日数で除して得た数とする。この平均利用者数等の算定に当たっては、小数点第2位以下を切り上げるものとする)を使って計算します。
具体的には、前年度の延べ利用者数が、要介護者9,000人、要支援者1,000人だった場合、9,000÷365+1,000÷365×0.3=25.5人(小数点第2位以下切り上げ)となります。
この数を3で割るので、25.5人÷3=9人(端数は切り上げ)が必要な看護職員と介護職員の合計数です。
ただし、毎日9人いる必要は無く、常勤換算(非常勤の職員は、常勤職員の勤務時間で割った人数とする)で、9人在籍していれば良いとされています。常勤(フルタイム)で働く職員も、週40時間しか働かないので、実際勤務する職員は、かなり少なくなります。
仮に、定員30名で要介護者が25人、要支援者が3人入居している介護付き有料老人ホームで、看護職員と介護職員の合計が、厚労省の基準に適合する9人しかいない施設を想定して1週間の勤務表を作ります。
夜勤を2人ですると、日勤は2人の日が4日間、3人の日が3日間となります。夜勤を1人でする場合は、日勤は4人の日が4日間、5人の日が3日間となります(上記の人数は、労働者に認められている有給を全く使わないことを前提としています。介護職員が有給をなかなか取れないのは、このような理由からです)。
日勤を職員2~3名で運営するのは不可能なので、定員30名ぐらいの介護付き有料老人ホームでは、ひとり夜勤が多く存在しています。
この人数を見て、十分な介護ができると思いますか?
厚労省がこの人員配置基準を定めているということは、国はこの人数で適切な介護ができると想定しているということです。
利用者は、入浴・排泄・食事等の介護が必要な高齢者であることを考えれば、とても正常な考えとは思えません。
認知症の高齢者と接したことのある方なら、同意いただけると思います。
なお、令和6年度から、見守り機器等(各種センサー、カメラ、インカム等)のテクノロジーを複数活用している等をしている場合は、3対1基準が緩められて3対0.9の人員配置で良いことになっています。
ではなぜ、このような基準が存在するのか?
人員配置基準を手厚くすると、その人件費をまかなう費用を、介護報酬として支払う必要が出てくるからです。
財政状態が危機的な国は、公費と介護保険料負担を増やすことには極めて慎重です。
そこで、3対1 の基準より多い職員が働く介護付き有料老人ホームに入居している高齢者からは、人員配置が手厚い場合の介護サービス利用料を徴収することが認められています。
高級な介護付き有料老人ホームなどでは、人員配置を 2.5対1、2対1、1.5対1 にして、その分の人件費を利用者から徴収しています。
プレジール春日は、人員配置を 2対1 (基準の1.5倍)にしていますが、今のところ、その分の人件費はいただいていません。
介護を行うのは人間です。どんなに優しい人でも、あまりに忙しいと優しく接することが出来なくなります。
プロなので、イライラを顔や態度に出すことはやってはいけない事ですが、やむを得ない部分もあると思います。
プレジール春日では、定員30名に看護師日勤1~2名、介護職員日勤6名、相談員日勤1~2名、夜勤介護職員2名体制を基本として、ゆとりある介護を目指しています。
上記から1日の看護職員と介護職員の合計人数を計算すると、看護職員1~2名+日勤介護職員6名+夜勤介護職員4名(夜勤は16時間拘束の14時間勤務なので、2日働いたことになります)=11~12名。つまり、看護職員と介護職員は、1日で11~12名働いています。