認知症は誰でも成りうる

認知症の完治薬はない

誰も認知症にはなりたくないですよね。多少の物忘れは仕方がないとしても、健康で長生きをして、家族や人様に迷惑かけることなく穏やかに死んでいきたい。そう願っても、誰が認知症になるかはわかりません。2019年時点で、認知症を予防したり、改善したりする薬は承認されていません。進行を多少遅らせる物がある程度と考えてよいと思います。

3大認知症

認知症にはたくさんの種類があります。その約6割がアルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)、約2割が脳血管性認知症、約1割がレビー小体型認知症(レビー小体病)と言われています。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、アミロイドβ蛋白やタウ蛋白という蛋白質が脳にたまって神経細胞が壊れ、脳が萎縮するために発症すると考えられています。短期記憶に関わる海馬から萎縮が始まりだんだんと脳全体に広がるので、最初は物忘れがひどくなり、ゆっくりと他の症状が出てきます。男性より女性の方が多い認知症です。

必ず現れる「中核症状」としては、食事を食べたことを忘れる記憶障害・自分のいる場所や日付がわからなくなる見当識障害・おつりを計算できなくなる判断力障害・服を着ることができなくなる失行・料理を見ても食べ物とわからなくなる失認などがあります。

 

その人の元々の性格や置かれている環境や人間関係などによって現れ方が異なる「BPSD(行動・心理症状)」は、以前は周辺症状と言われており介護者を悩ませるものです。財布や服を取られたと訴える物取られ妄想・ひとりで歩き回る徘徊・急に怒り出す暴言や暴力・何もしたくなくなる抑うつ症状などがあります。

脳血管性認知症

脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によって発生する認知症です。脳梗塞を起こしても後遺症が全くない場合もありますが、突然発症する危険性があるので、一番怖い認知症と言えるのではないでしょうか。また脳血管障害は再発しやすく、再発を起こすたびに症状が悪化・進行する階段状の機能低下を示します。女性より男性の方が多い認知症です。

障害を受けた脳の部位や障害の程度によって症状が異なります。記憶障害はアルツハイマー型認知症に比べて軽度の場合が多いようです。他に、歩行障害・手足の麻痺(左右片方だけの麻痺が多い)・呂律が回りにくい・飲み込みがうまくできなくなる嚥下障害・頻尿や尿失禁などの排尿障害・抑うつ症状・感情をコントロールできずちょっとしたことで泣いたり怒ったりする感情失禁・夜になると急におかしなことを言い出したり、幻覚が見えたり、興奮したりする夜間せん妄などの症状がみられることがあります。

 

なお、脳血管性認知症とアルツハイマー型認知症を併発していることが多く、混合型認知症と言われます。混合型認知症が一番多いと考えている専門家もいます。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は、レビー小体という蛋白質が脳に蓄積するために、脳の神経細胞が消滅することにより発生する認知症と言われています。これも男性の方が多い認知症です。特徴的な症状が3つあり、第一が「子供がいる」「虫がはっている」など実際いないものが見える幻視です。第二に、身体がこわばったり手が震えたり、歩幅が小さくなり最初の一歩が出づらい一方、歩行し始めると止まれなくなるパーキンソン症状があります。第三に、時間や場所といった状況の把握や会話の理解力が低くなる認知機能障害がありますが、意識がはっきりしている時と反応が乏しくぼんやりしている時があります。

 

他には、人が夢を見ているレム睡眠時に、夢の中と同じ行動をするため、大きな寝言や手や足を振り回すレム睡眠時行動障害・頻尿・起立性低血圧の症状が出る方もいます。

認知症のリスクを知る

アルツハイマー型認知症は、MCIスクリーニング検査またはAPOE遺伝子型検査を受けることにより、将来発症するリスクを知ることができるそうです。どちらも約2万円で受けられます。多くの医療機関で受けられますので、興味のある方は検査してください。

認知症の予防

高血圧、高脂血症、肥満、糖尿病などのメタボリックシンドロームは、動脈硬化を引き起こして心臓病や脳卒中のリスクを高めることは常識となっています。当然に、脳血管性認知症のリスクも高めますが、アルツハイマー型認知症においても危険因子として考えられてきています。メタボ予防に良いとされる130分程の速歩き、青魚・大豆製品・緑黄色野菜・果物・ナッツなどを使ったバランスの良い食事を13食腹7分目食べる。十分な睡眠をとり、飲酒は適量に抑える。禁煙は言わなくてもいいですね。

 

このようにすれば、認知症になるリスクは低くなります。もちろん0にはなりませんので、認知症は誰でも成る可能性があると言えます。

後悔しないために

「三大認知症の中で一番やっかいなものは、脳血管性認知症である。」と考えている介護職員は多いと思います。もちろんお一人お一人症状が異なるので、あくまで一般論として読んでください。脳血管性認知症は、性格が変わり、暴言や暴力が伴うこともあります。誰も成りたくてなった訳ではないので、やむを得ないことです。

 

脳梗塞や脳出血でコロリと逝ければまだ幸いですが、暴言暴力のある脳血管性認知症にもしなってしまったら、周りの方に大変な迷惑をかけることになります。介護職員の人手不足や経済的な問題で、家族で介護するしかない場合には、自分の愛する人に暴力を振るうこともありえます。

 

少しでも認知症になる危険性を減らすために、上記の予防法は保険と思ってやって行きましょう。

井原俊明

公開日2019/11/25(更新日2019/12/13)